先週に引き続き、またまた今週も菱田春草を観に飯田市美術博物館へ。
菱田春草の作品のすばらしさと、展示内容が良くって
いままでの中で最短のリピートです。
今回は菱田春草の作品と人柄についてちょっと書きたいなと思ってます。
菱田春草は1874年(明治7年)、長野県飯田飯田市に旧飯田藩士の
いいとこのおぼっちゃんとして生まれました。
本名は菱田三男治。(三男です)
幼いころはみおさんと呼ばれていたとか。
画家を志した菱田春草は
現・東京藝術大学と東京美術学校に入学。
岡倉天心の元、横山大観や下村観山、西郷孤月らとともに
日本画の新時代を築いた人物です。
菱田春草「夕の森」 |
この「夕の森」という作品は菱田春草が横山大観とともに
アメリカに遊学しに行った際の作品。
買ったポストカードを写真に撮って載せてるので色が良くないです。
ご了承ください。
夕の森は西洋の作品の影響を受けたもので、
少しコローと東山魁夷を思わせるような・・・
それまでの日本画にはない、写真のような作品です。
ほわっとした優しい夕方の色合いが綺麗で、
烏の影の配置もすごくぐっとくる作品でとても好きです。
今回の飯田市美術博物館の「創造の源泉 菱田春草のスケッチ」展には
この作品の展示はありませんでしたが、同館で上映中の
プラネタリウムの「菱田春草の青春」でこの作品の紹介がありました。
菱田春草「月下孤」 |
菱田春草「鹿」 |
朦朧体という表現技法を確立させた菱田春草は
線を描かない新しい技法に批判を受けながらも
評価を受けていきます。
私は「月下孤」や「鹿」のように動物を主題に描いた作品が大好きです。
静かな気持ちになるような美しさだと思います。
「創造の源泉 菱田春草のスケッチ」展では
菱田春草の制作の様子を垣間見れるような感覚がとても面白かったです。
スケッチを見ていると、思ったのが
「菱田春草って絶対、真面目な性格!」
展示を見ながら作者の性格とかを考えるのが私は楽しくて好きなのですが、
タイトルにもしたように、菱田春草の生真面目さがスケッチから溢れています。
スケッチでは対象を細部まで描き込んで、色合いを細かくメモで残しています。
展示ではスケッチブックは何冊も紹介されていて
スケッチブックによってなんとなくスケッチの対象が分けられているような。
後期に散歩の際持ち歩いて、使っていたのは落ち葉ノートという
小さいノートです。
なんだか、すごくマメ!!
って思いました。
絵巻物の大作を描く際に
下絵を描いて、もう一度スケールを変えて下絵を描いて
本番なのですが、
なんだかその制作過程を見ていても真面目~っていうのが私の感想です。
東山魁夷の障壁画の制作過程も下絵から展示で見たことがあるのですが、
東山魁夷は職人気質。
菱田春草は研究熱心。
と、なんとなく思いました。
今回、初公開で注目されていた未完の大作「雨中美人」
では、本作とともにスケッチも公開されていました。
六人の傘をさす女性たちの中で、一人だけ傘から顔を見せている女性。
この作品のモデルは菱田春草の奥さんの千代さん。
写真を見たらすごく目がパッチリしていて美人で、
作品の人物に似ている!!!
モデルになっていたんだから、当たり前のことなんですが、
なんだか、おおおー!ってなりました。
千代さんはモデルとして菱田春草の指示のもと
炎天下の中、ああでもないこうでもないとポーズをとらされ続け、
倒れてしまったそうです。
千代さん、まじめ男菱田春草の被害者です。
雨中美人は最終的に未完のままとなってしまいますが、
この制作を中断し、5日で仕上げたとされているのが、
もっとも有名な「黒き猫」です。
ネコを描いた作品を数多く残した菱田春草ですが、
驚いたことにネコが嫌いだったそうなのです。
意外すぎる!!
ネコ好きとばかり思ってました。
ついこの間、ものすごくネコを愛する画家の作品を見に行った後だったので
なんだか衝撃でした。
藤田嗣治とはちがって、持ち前の真面目で観察対象としてみていたのでしょうか。
菱田春草、鳥は好きだったみたいです。
この作品は二作品で春秋というタイトル。
私は春が特に好きです。
イタチのほわっとした毛並みと、バランスよく描かれたヤツデとクマザサ
の構図が見入ってしまうくらい好きです。
晩年の作品に共通していえますが、
構図が琳派っぽいです。
生涯を通して古画研究に勤しんでいた菱田春草は古きのなかに
良さを見出して、新しい自らの画法を結び付けていたことがわかります。
晩年といえども、まだまだ若いです。
菱田春草は36歳で亡くなりました。
タイトルにもした不熟というのは、師の岡倉天心が
菱田春草に寄せた言葉の中にあります。
親友だった横山大観は、菱田春草が生きていたならば、
自分の絵はあと10年進んでいただろう
という言葉を残しています。
菱田春草は失明の危機に直面しながらも
絵と向き合い、腎臓の病に倒れるまで、
新しい日本画と向き合い続けた人物です。
絵に対する真摯な姿勢と、日本画の探求心が
今でもこれだけ多くの人を惹きつけているのではないでしょうか。
一度見ても、何度でもまた目にしたくなる
そんな魅力が菱田春草にはあります。
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